「私だけのストーリー part 3」

 こんにちは!真彩巳です。

 私はこの前世療法を受けてから1か月以上過ぎています。表面上は何も変わっていないかもしれません。でも私の内面では恐怖のベールがはがれたとたん、まるでこんがらがった糸がほぐれていくように、いろんな事柄が見えてきました。また、自分の新たな課題にも気がつきました。でももう私は恐れません。自分の問題は自分で解決していける。前世療法とはそんな勇気を与えてくれるセラピーなのだと思います。

 それでは前回に引き続き、前世療法を受けた時の私のお話をご覧ください。

(これまでのお話が知りたい方は、ukai3ukai4をご覧くださいネ!)


 私はいつの間にか、今の自分に戻っていた。ここは始めに座っていた高原の白いベンチだ。目の前の靄の中から誰かが現れる。年を取った男性だろうか。中世のヨーロッパにいた学者のように、長いローブを身に纏っている。

「コペルニクス?」

その人物が名乗ったわけではない。自分で思い付いたのだが、私はコペルニクスが何をした人なのかよく知らない。

「迷っているなら、正しいことをしなさい」

その人物は私に向かって、ゆっくり話し出した。

「あの、正しいことって何ですか?」

私はとまどいながら尋ねた。ねえ、コペルニクスって、私の人生に関係ある?

「正しいこととは、善悪ではない。必ずしも他人はそれを正しいとは言わないだろうが、問題は自分でそれをする勇気があるかどうかだ。結果はあとで証明される」

「でも、私がそんなことをしたら、周りの人を傷つけてしまいませんか?」

私は誰かを傷付けてまで、夢を追うことなんてできないよ と心の中でつぶやいた。

「だから他者への思いやりも必要なのだよ」

コペルニクスは無表情だが、穏やかな雰囲気がある。

私はずっと疑問を持ったまま話を聞いていた。私はどうしてコペルニクスなんかと話しているのだろうか。

最後にコペルニクスは私に握手を求めてきた。私が手を差し出すとそのまま抱きしめられ、コペルニクスは溶けていくように消えていった。

 

 再び私はベンチで一人座っていた。ひざには、暖かいひざ掛けが乗っている。

「まさみさん、先ほどのベールはどうなりましたか?」

高橋先生の声が聞こえてきた。

「ひざ掛けになりました」

「それでは、そのひざ掛けはもう必要ないですね。捨ててしまいましょう。どうします?燃やしても切り刻んでもいいですよ」

私は一瞬迷ってしまった。やっぱりライナスの毛布みたいだ。こんな気持ちのいいもの、ぼろぼろにして捨てたくはない。でももう必要ないのだ。お別れしよう。

「川に流します」

私は思い切って、雪解け水の流れる小川に流した。ひざ掛け大になった私の「恐怖」は水の流れに逆らって、行ってしまった。


「すてきな物語ができたねえ!」

催眠状態から覚めると、高橋先生が面白そうに声をかけてくれました。

「いっぱい泣いて、すっきりしたでしょ。催眠状態は1時間あったんだよ」

「えっ、そんなにありましたか?」

私にはあっという間の出来事でした。そして自分のシャツが涙で濡れているのに気付きました。こんなに思いっきり泣いたのは何年ぶりでしょう。目覚めた後はすっきりした気分で、恐怖も胃の痛みも、あのひざ掛けと一緒に流れていったようでした。そしてこの冒険を自分で完結できたのは、常に声をかけ私の話に耳を傾けてくれた高橋先生のおかげなのだと感謝しました。


 帰り道、地下鉄に揺られながら、私はまた思いを巡らせていました。私はこれまでの潜在意識で、自分の身近な人ばかりと出会っていました。今回のように歴史上の人物が現れたのは初めてだったので、「コペルニクス」が気になって仕方がありません。一体、私は彼から何を学ぶべきなのでしょうか?私はスマートフォンを取り出し、Googleで検索してみました。すると、ウィキペディアに次のような説明がありました。


「ニコラウス・コペルニクス」

●ポーランド出身の天文学者、カトリック司祭である。当時主流だった地球中心説(天動説)を覆す太陽中心説(地動説)を唱えた。これは天文学史上最も重要な再発見とされる。


 更に検索を進めていくと、「コペルニクス的転回」という言葉が目にとまり、クリックしてみました。

「コペルニクス的転回」

●物事の見方が180度変わってしまう事を比喩した言葉。(ウィキペディアより)


 おそらくあの時出会った人物は、「コペルニクス的転回」を擬人化したものだったのでしょう。

潜在意識で出会った言葉は、『問題は、自分でそれ(=正しいこと)をする勇気があるか』でした。今はまだ自分の限界を決めつけているのかもしれませんし、恐怖心もこれからまた現れてくるかもしれません。そんな時、現状に甘えず発想の転換をする勇気を持てるのか?コペルニクスの姿で、自分の潜在意識が私に問いかけてきたのだと思いました。

(そんな勇気と他人への優しさを兼ね備えた人間なら、なんだってできるよね…。)

私が恐れていた「自分が無能で役に立たない人間ではないか」という思いも、「コペルニクス的転回」があれば変えていける。そこに改めて気付くと、自分の心がほんのちょっと軽くなったような気がしました。


 自宅に戻ると、今度の私は車に乗って幼稚園で待っている娘を迎えに行きました。

帰宅すると私は

「ねえ、抱っこしようか?」

娘に着替えもさせず、そう言ってみました。

「うん、お母さんギュウして!」

嬉しそうにひざの上に乗ってきた娘に、力強い生命の重さを感じました。

(ベスとアンジェラは、この時代でまた会えたんだ。よかったね!)

娘の小さな手が私の背中で力を込めているのがわかり、私は自分がまたベスに戻ったような気持ちになりました。たった4歳の女の子でも、なんだか頼もしい存在。

(私はもうひとりじゃない。今、こうして家族と一緒に生きているんだ!)

一瞬、私は娘にアンジェラとベスの話をしてあげたいと思いましたが、すぐに思い直しました。

きっと娘には娘なりの素晴らしい物語を持っているはず。それなのに私の話を聞かせたら、娘に母親の過去生を刷り込んでしまうような気がしたからです。

 だから、あの話は私だけのストーリー。そしていつかは娘の過去生の話も聞いてみたいなあ、と思うのでした。


(文/鵜養真彩巳)