シミを無くす。二日酔いにならない。物忘れが無くなる

シミを無くす。二日酔いにならない。物忘れが無くなる


 伯母を食事に誘った。

「最近外に出たくないんだよね」

「なんで?」


 今年70歳になった伯母、私の問いに答えずに(無視しているのか?)ナポリタンスパゲティをフォークでクルクル巻いて、口に頬張る。口の脇ににはケチャップが付いている。


 伯母はそれを紙ナプキンで拭くと、ニッコリ笑いこう口を開く。


「あぁ~やっぱり野毛の老舗洋食屋のスパゲティは美味しいわね~」


「で、なんで外に出たくないの?」


 私の二度目の問い、私はミートソースのスパゲティをフォークでクルクル巻いて口に運んだ。そして水を飲む。車を運転するので、酒は飲めなかった。


「あっそれね。最近顔のシミが酷いのよ!! もうキャピキャピの年頃なのに困ったもんよ」


 どこが? と、やっと私の問いに答えた伯母にと突っ込みそになったが私は一度頷いた。確かに伯母の左ほっぺらへんのシミは目立った。まるで焦げた油揚げのようだった。

「それに酒飲むと、次の日キツイのよ! 本当にキツイ! 二日酔い……どうにかならないかしら??」


 昔、映画で見たシベルスタスタローンのマシンガンの如くいっきに伯母は喋る。と、一息するようにグラスに入った赤ワインを流し込む。


「ハァハァ」 


 私は伯母の喋り続けている間、息が止まっていた。まるで100メートルを全力疾走したあとのようだ。その勢いで赤ワイン飲めば、俺の歳でも二日酔いになるわい!! と言いたかったが、苦しくて声が出なかった。


「大丈夫! はい! 水」

 伯母は私に水の入ったコップを手渡す。私はありがとうと言った。

「それにねぇー物忘れが激しいのよ! とくに人の名前。例えば芸能人とかの名前出そうとして、ほら、あれあれ!! あれ! あのドラマであの役やってた人、あぁー喉のここまで出ているのに出てこないってよくあるのよ! もう苦やしいったらありゃしない」

 それは俺もだよ、と言いたかったが、美味しそうにスパゲティを頬張っている伯母を見ていたら、私は微笑ましくなり言うのをやめた。

「どうにかならないもんかねぇ?? そういやあんたの名前なんだっけ? 妹の子供で私の甥、1975年9月6日生まれのおとめ座。ヤワラちゃんと同じ誕生日なんだよ。そこまでわかってるのに、あんたの名前が出てこない。喉を通り越して舌の真ん中あたりまで出てきているのに出てこないわ。ハハハ」


 私は口をポカーンと開けた。(もちろん伯母が喋り続けた時、息は止まっていた)……そして、苦笑した。……早く解決策を探さなくては!!



【解決策


 伯母の解決策は日常の中で見つかった。


 私は、帰りの電車に乗った。京浜急行だ。乗ると幸せになれるという希少価値のある黄色い電車「ハッピーイエロー」だった。少しウキウキ気分の私は車内は座れはしなかったが、スペースが空いているので快適だった。


 鞄からイヤホンを取り出し両耳に装着する。プラグをスマートフォンに差し込み、オーディオのアプリを立ち上げた。T-BOLANの「Bye For Now」を選択した。最近カラオケで歌うのでこの曲を練習するためにダウンロードしたのだ。が、音が聞こえない。


 きっとイヤホンが壊れてしまったのだろう。「チッ!」私は舌打ちをし、プラグを抜いてイヤホンを鞄に入れた。そして、読みかけの小説を取り出した。「!?」なんてこった。挟んでいたしおりがない。何処まで読んだかわからなくなった。小説も鞄に戻す。


 ガタンゴトン電車の揺れる音の中、私は耳をただただ澄ました。すると、その中で前に立っている40代くらいの男性の会話が聞こえた。そこに伯母の悩みの解決策があったのだ。


A「それにしても、お前、肌がツルツルだな?」


B「そんなに褒めるなよ! いいこと教えてあげるよ。肌がツルツルでしかも、二日酔いにならない方法ってあるんだぜ!」


A「本当か? 教えてくれよ!」


A「そうだな。今度、居酒屋でホッピーセット一杯奢ってくれたら、いいよ」


B「いいよ! 俺もツルツルな肌になりたいんだ。教えてくれ!」


A「白ホッピー、黒ホッピーのハーフ&ハーフな?」


 私は二人の会話に耳を傾けた。



【シミ&二日酔い解決策】


B「L-システインって知ってるか?」


A「シブガキ隊の歌か?」


B「馬鹿! それはナイナイシックスティーンだよ! 歳がばれるだろ!! L-システイン! これを服用すれば、シミが取れ肌はツルツルで二日酔い知らずになれるんだよ」


A「具体的にどんなのに入っているの?」


B「ジャーン!」

 と男は言い、クスリの便を出した。そこには「ハイチオールC」と書いてあった。


A「それってただのビタミン剤じゃないの?」


B「違うよ! L-システインが入っているんだよ。二年前だったと思う。行き着けのバーの店主に薦められてさ。半信半疑で買ってみたんだけど、効果にビックリしちゃったよ。二日酔いは勿論、薄っすらあったシミもいつの間にか消えちまったよ。一ヶ月経ったらツルツル赤ちゃん肌の出来上がりさ!」

 私は、それを聞くと唾をゴクンと飲み込んだ。


A「そっかぁそりゃあ効きそうだね。俺も今日から試してみるよ!」


B「いつ買うの?」


A「……バカ! 言わないよ! 一昨年の流行言葉なんて言わないよ!」


B「あぁーそれと物忘れも無くなるコツがあるんだよ」


A「えっ!! マジ?」

 そこで最寄の駅に着いた。私は扉の前まで歩く


B「そうそう簡単だよ……で、こうすれば……」

 まだまだ聞きたかったが、扉が開いた。私は電車から降りた。

 

 早速、薬局へ行きハイチオールCを買った。これを伯母の家に届けよう。物忘れが無くなるコツは聞きたかったが、きっとまたどこかで聞けると思った。


 ハイチオールCの入ったビニール袋をクルクル回す私の前をツバメがビューンと横切り一回孤を描き巣に戻る。そして雛に餌を与えていた。


(文・だいのすけ)